《ユーリー・ノルシュテイン×高畑勲 公開トーク》メモ
2016/11/03(木)同志社大学 寒梅館ハーディーホール
高畑勲、ユーリー・ノルシュテインとの対談で作品の魅力熱弁 https://natalie.mu/eiga/news/208414
※当時の講演メモを元に文字起こし。時間の経過とともにかなり記憶が薄れております。
断片的なメモしか残っておらず、記憶違いや記録間違いが多いに有り得ます。
公演を聞いた一般人の単なる記録であり、大学の関係者ではありません。
高畑勲:
『話の話』の解説本について
アニメージュ文庫 話の話 - 徳間書店 https://www.tokuma.jp/book/b503839.html
エイゼンシュテインの部屋
(セルゲイ・エイゼンシュテインについての話だったと思うが詳細覚えておらず)
トレーシングペーパーで表現された霧
内容と表現←心に訴えてくるもの
その時は日本語字幕がついておらず、その分緊張感があった。
これは貴重な体験だった。
ロシアは霧が多い。歌詞にも多い。
♪♪♪ 『灯火』を歌うノルシュテイン氏
『霧の中のハリネズミ』の制作はあまりに大変で作り終わったあと、自分は生きていないのではないかと思った。
『話の話』の制作はさらに大変で、製作中に声帯を悪くして声が出ず、囁き声で会話していた。
これには姑(ノルシュテインの嫁の母)は大喜びで、婿の煩い声を聞かずに済むと言っていた。
姑はそもそも娘とノルシュテインの結婚に不満を抱いていた。
姑はノルシュテインがアニメーションを作り出してからは優しくなりはじめ、蕎麦がゆの作り方を教えてくれた。
●『霧の中のハリネズミ』について
『霧の中』→ダンテ『神曲』の地獄めぐり 迷い
恐ろしい、子供を驚かす 肯定的な終わりに向かうための驚き
心理学科(学者?)の人が『霧の中のハリネズミ』が病気の治療に役立ったと言ってくれた。
『霧の中のハリネズミ』は心理状態を表している。
ハリネズミ 好奇心が恐怖を上回る
①カタツムリ
②何かわからないもの葉っぱを戻す
③コウモリ
④蛾
⑤ミミズクはずっと井戸でこだま「変な奴」
⑥何かわからない→大きな木
⑦包みを置いてきたことに気づく→パニック
⑧犬が持ってきてくれる
⑨あわてて川に落ちてしまう
⑩自分はもうダメだと思う
優れた作品は治療になる
プーシキンを数行読むだけで......
私はプーシキンの詩を暗記している
♪♪♪ プーシキンの詩を諳んじるノルシュテイン氏「馬の蹄が響いて〜」
●『話の話』について
3歳の頃からの印象の積み重ね
叔母さん 第二次大戦→結婚→モスクワで出産→伝染病で死産→赤ちゃんはいないがお乳が出るので朝靄の中お乳を出す叔母さん
自分もそのお乳で育った。その美しい光景の印象。
子守唄「ハイイロオオカミ〜」は当時よく歌われていた
第二次世界大戦で戦線から帰らなかった大人達
永遠のテーマ・生活・光の中の失いたくないもの(乳を飲む赤ん坊、子守唄)
人生において何が重要か問い続ける
生きる意味とは?
親しい友人、好きな人、子供が産まれる、問いかけはどこかへ行ってしまう。
政治・権力・戦争への方向づけ←生活・習慣を脅かすもの 罪を与えなければならない。
●CMのアニメーションについて
ソ連と今(2016年当時)どちらの方が仕事と生活をする上で良かったかと言うと、
ソ連時代の方が良かった。
『ケルジェネツの戦い』は国家の予算で作成できた。
アニメーション、芸術において資本主義より社会主義の方が良かった。
今、ロシアではスポーツにお金が使われている。
ミハエルアンダーシンの『クリスマス』という作品が良い
(マイケル・アンダーソン/Michael Anderson のロシア読みか?該当作品わからず)
ソ連崩壊後、CMの仕事をお金のためにやるようになった。
4本のCMを作るのに1年もかかってしまったので、出資の方が多かった。
今は日本に(講演などに)来てギャラを貰うことで制作できている。
30秒で砂糖の良さをみせる、良い勉強になった。
●『おやすみなさい子供たち』TV番組の仕事について
時間がかかりすぎてお金にならなかった。
宮崎駿がジブリで購入しようとしたが、ロシアの1ch(国営放送?)が値段をふっかけたので購入を断念した。
高畑勲:
●社会主義について
剥き出しの資本主義にどう対応するか。
『霧の中のハリネズミ』についての文章
『水の上のハリネズミはなぜ歩かないのか』(『ユーリー・ノルシュテインの仕事 』収録)
実際問題だらけだったが、学ぶものもあるのではないか...
『話の話』=お話のお話
『グスコーブドリの伝記』 書物の中の書物
Life=生活、人生の全て
旧約聖書 『雅歌』(歌の中の最高の歌の意)
物語が1回で終わらない 繰り返し繰り返し 終わらない物語という印象を抱く。
ハリネズミが体験したことは人生の全てである。
『狐と兎』から始まった 哲学 民話を扱う事 人生の全てを表現している。
希望を持たないと生きていけない
ペチカの蓋を閉めてはいけない 蓋を開いて...
困難から逃げる 偉大な芸術作品が力になる
プーシキンを読んでいないロシアの若者→君達のために唄っているのになぜ読まない。
自然の力を自分のものに
プーシキンはロシアが好き 詩『秋』
それは笑い話にされた「私の旦那は酔っ払ってもプーシキンも出てこない...」
高畑勲:
ノルシュテインのアニメの「物質感」を見るべき。
モノとして迫る真実感。マチエール、モノが持っている力、訴える力。
第2の自然
デジタルでは出来ない。
有愛の力
すばらしい芸術(音楽でも...)に出会うのは大切な事。
当時の講演会には、講演会の情報を聞きつけた熱狂的ファンが大勢かけつけ(私もその1人)、大学の在学生と一般聴講者で会場は超満員でした。
講演会後にはノルシュテイン監督自ら制作費のために...とスーツケースに詰めて持ってきたモノを販売するコーナーが設けられましたが、物販の数に対してファンの人数と熱意が凄まじく、物販コーナーに怒涛のように人が押し寄せ、「物売るっていうレベルじゃねぇぞ!」をリアルに目撃してしまいました。あまり戦場ぶりに近づくことも躊躇われたので、何も買うことはできなかったのですが、高畑勲監督とユーリー・ノルシュテイン監督という、アニメの神々の対談を間近で聴講できた事はあまりにも素晴らしい経験でした。ノルシュテイン監督へ高畑勲監督がインタビューをする、という形式だったので、『かぐや姫の物語』への言及などは全く無く、2018年に高畑監督がお亡くなりになられてしまった今、もう二度とこのような機会も無くなってしまったと思うと非常に残念です。また、ノルシュテイン監督の『外套』も昨今のロシア情勢からしても、ますます完成が難しいのではないかと非常に心配しています。今になって見返すと、当時のメモがあまりに断片的なので、残念なほど講演の話の内容を思い出すことが出来ませんでしたが、記録としてここに書き残しておきます。